Research

研究例

和歌山研究林がある平井地区に伝わる民話

 

「古野山の玉石」 

  昔、和田というところに親子で狩人の名人が住んでいました。ある日のこと、息子が観音滝のヌタノクボへシカ笛を持って行き、ふいているとやがて大きなシカ が現れました。すぐに射止めて、その場でさばき始めました。その時、後ろの方に人の気配がしたのでふり向くと、とてもきれいな娘さんが立っていました。不 思議に思った狩人は様子をうかがっていると、娘は「肉がほしい」と指さすので、シカの肉をあげると、すっと姿を消してしまいました。しばらくして、又、あ らわれました。驚いたことに口のあたりが、血でまっかになっていたのです。

  よくみると娘ではなく、二メートル以上あるやまんばなのです。驚いた狩人は何もすることができません。すると、やまんばは、「どうじゃ、わしとひとつ大声 でほえあってみようじゃないか」といいだしました。やまんばの声はとても大きく、聞いたが最後、こまくはやぶれ死んでしまうほどなのです。狩人もこのこと はよく知っていましたが、「よし、やろう」と言って出ました。「さあ、おたがいに背を向きあってやろう」「ようし」とばかりに、背を向いたすきに、自分の 耳に鉄砲の玉をつめ、狩人が「おまえからほえろ」と言いました。すると、なんと大きな声か耳にせんをしているのでわかりませんが、地なりで体がゆれ、あた りの木の葉がバラバラと散りました。「さあ次はわしだ」というが早いか、狩人は鉄砲に鉄の玉をすばやくこめてやまんばの耳の穴めがけて引金をひきました。 やまんばは体に松やトガ、モミなどのやにをつけ、それに砂の木の皮などをつけて身を守っているので普通の鉄砲の玉では通用しません。しかし、さすがのやま んばも、もんどりうって谷に落ちていきました。狩人も気が狂ったように家に帰り、そのことを父親に話しました。

 あくる日、父親と二人で来てみると、二メートル以上もあるやまんばも耳を打ちぬかれてはたまらず、仏岩にバッタリしがみ着くようにして死んでいました。

 そこで二人は今玉石のあるところへうめて霊をしずめました。しかし、この玉石に手をふれると、ケガをするといういわれがあるそうです。