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人間とコウモリ

  北海道大学

水産学部1年         窪田遼

  文学部 1年         岸本洸史

  工学部環境社会工学コース1年 東畑永人

  京都大学

理学部2年          山崎曜

農学部資源生物科学科2年   木村一晶

 

本来、森にすむ動物であるコウモリがどのように人間の住む環境に適応しているか、もしくはどのような影響を受けているのかを調べることで、コウモリの森と里との連関について調べることにした。

 

調査方法

 北大和歌山研究林、玉ノ谷橋、平井集落、大原平、七川貯水池の5つのポイントにおいて、夜行性であるコウモリが、おなかをすかして最も活動が盛んになる18時30分〜20時30分にコウモリの超音波を測定した。また19時40分〜20時30分にコウモリの餌になると思われる昆虫を捕獲して調べた。

超音波の測定をするためにBAT DETECTORというコウモリの超音波をキャッチする道具を使った。これによってコウモリの飛来数がわかると同時に、コウモリの種類によって超音波の波形が変わるので、コウモリの種類を調べることができる。

また虫の捕獲のためにライトトラップと呼ばれる道具を作製し、使用した。これはダンボールの一面にガムテープを張り、それに1メートル離したところから光を当て、虫を引き寄せ捕獲する装置である。捕獲した昆虫は、双翅目、鱗翅目と、目の段階まで分類し、個体数をそれぞれ集計した。

 

調査結果

 まず、BAT DETECTORでキャッチした超音波の回数を各ポイントにおいて、それぞれ時間帯ごとに集計した。結果、図1から図5のようになった。

         図1

         図2

         図3

         図4

         図5           

調査地点

分類群

個体数

3mm以上

玉の谷橋

双翅目

23

2

 

半翅目

1

1

 

蜉蝣目

13

13

 

トビケラ目

2

2

 

膜翅目

1

1

 

カワゲラ目

 

 

 

鱗翅目

 

 

 

甲虫目

 

 

大原平

双翅目

57

3

 

半翅目

 

 

 

蜉蝣目

10

10

 

トビケラ目

1

 

 

膜翅目

 

 

 

カワゲラ目

 

 

 

鱗翅目

1

1

 

甲虫目

1

 

天然林

双翅目

25

1

 

半翅目

 

 

 

蜉蝣目

 

 

 

トビケラ目

 

 

 

膜翅目

3

1

 

カワゲラ目

 

 

 

鱗翅目

4

4

 

甲虫目

 

 

平井集落

双翅目

35

 

 

半翅目

4

 

 

蜉蝣目

1

1

 

トビケラ目

 

 

 

膜翅目

23

5

 

カワゲラ目

 

 

 

鱗翅目

 

 

 

甲虫目

 

 

七川ダム

双翅目

29

1

 

半翅目

 

 

 

蜉蝣目

 

 

 

トビケラ目

 

 

 

膜翅目

3

1

 

カワゲラ目

 

 

 

鱗翅目

 

 

 

甲虫目

1

1

         表1

 

これらの図からコウモリは夜間水辺で活動していることがわかった。人が住んでいる里では水辺に比べて確認できたコウモリの個体数が少なかった。また、天然林についても個体数が少なかった。

昆虫の種組成とコウモリが餌とする可能性の高い体長3mm以上の個体数も調査地点ごとに変化していた(表1)。

今回の調査で、確認できた超音波の種類は5種類あり、その一つはコキクガシラコウモリが発する超音波の波形と推測された(表2)。FM1はモモジロコウモリのエコロケーションコールの波形に似るが、詳細に同定することはできなかった。QCF1、QCF2については種類の同定はできなかった。

場所

 

 

 

 

 

 

 

コキクガシラコウモリ

FM1

FM2

QCF1

QCF2

SC?

保存林

1

2

1

0

0

0

大原平

0

18

0

1

3

0

平井集落

0

0

0

0

2

0

玉の谷橋

0

33

0

5

13

3

ダム

0

10

1

0

26

0

 

 

 

 

 

 

 

 

表2

 

考察

今回、自然林、平井集落などの水辺でないところではコウモリの数は少なく、昆虫の数も少なかった。(図1〜5 表1)一方、玉之谷橋、大原平で採集された昆虫は多かった。七川貯水池で採集された昆虫は少なかったもののライトトラップに虫がつかなかっただけで、目視の印象では玉ノ谷橋程度の量が生息していたと思われる。これらのことからコウモリの主な採餌場は水場であったと思われる。やはり、水場で発生した昆虫を食べていたのであろう。実際にコウモリの食べているものが判明すれば、より正確な昆虫とコウモリの関連が出ていただろう。

BAT DETECTORから聞こえる音の種類と回数が川とダムとでは異なっていたので、川とダムとでは活動しているコウモリの種類が異なると考えられる。(図1、2、5 表2)よって環境によって生息するコウモリが異なると考えられる。ただし、どのように2タイプのコウモリが川とダムですみ分けていたかは今回の調査ではわからなかった。目視での印象では川のコウモリは水面スレスレを飛行していて、ダムでは水面からある程度の高さのところをとんでいた。川で採集された昆虫の方が、サイズが大きく、ダムで採取された昆虫の方が小さかったので、そのすみ分けもあるかもしれない。

人間活動によってもたらされたダムによって生息するコウモリの種類が異なっているのは、紛れもなく人間活動の結果である。これはコウモリを介した森と川と里の関連といえよう。