なぜ、ライラックを観察するの?

 動物・植物は、季節の移り変わりに従い、様々な行動をおこしたり、様々な変化を見せたりします。動物では、渡り鳥の渡りや昆虫の羽化などの時期が、例として挙げられます。植物では、開芽・開花・紅葉・落葉などの時期が挙げられます。動植物のこのような現象は、気候・気象と関連があると考えられています。したがって、これらの現象が見られる時期を各地で調査することにより、それぞれの地方の気候の比較ができると考えられます。このように、動植物が示す季節的な諸現象の時間的変化、およびその気候・気象との関連を研究する学問分野が生物季節学(フェノロジー)です。
 植物の開花で春の気候変動を知るには、同一株、同一群落の長期間観察が必要です。あわせて広い範囲に観察点を設け、地域変化を考慮することが求められます。観察点を世界中に設けると、これらの観察点から得られた観察結果は、地球規模での気候・気象の変化を知る手掛かりとなります。生物季節学の研究は、様々な研究機関や学校あるいは個人などで行われています。その中のひとつがアルバータ大学デボニアン植物園です。デボニアン植物園では、植物の開花を通して春先の生活環境と地球温暖化を地域の人々と一緒に考える企画を実施しています。観察の対象となる指定植物は、エンレイソウ、ヤマナラシ、プレーリークロッカスやサスカトゥーンなどカナダに自生する7種にライラックを加えた8種です。それらの開花データをホームページに公開するこの企画は、人々の地球環境への関心を高めるとともに国際交流のきっかけを与える取り組みでもあります。この企画を参考に、北海道各地で見られる身近な植物の観察を行い、地域の気候・気象の変化を調べることはできないか、と考えました。

 ライラック(学名:Syringa vulgaris、和名:ムラサキハシドイ)はバルカン半島原産で、花は4月から6月にかけて咲きます。花の色と香りが好まれ、世界各地に植栽されています。広い地域の開花情報を毎年集積できますから、春先の気候変動を地球規模で検討するのに好都合な植物です。ヨーロッパでは一世紀以上にわたって開花が観察され、アメリカでも1950年代から継続調査されています。これらの国々では、開花状態は農作業の適期を判定する指標として経験的に利用されており、人間生活とも深く関わっています。

 ライラックは外国から来た植物ですが、北海道では公園や街路樹などに植えられ、広く親しまれています。「ライラック観測網」では、ライラックの開花・満開情報を交換しあい、各地の春の訪れを探っています。
 ライラックの花を楽しみながら、北海道の自然風土と春先の気候変化を考えませんか!

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ライラック(Syringa vulgaris)の観察方法

「ライラック観測網」では、次の方法で観察しています。

1.観察株の選定条件

この基準は、デボニアン植物園のライラック観察基準を参考にしました。
 (デボニアン植物園の基準に(2)、(4)項を追加しました。)

(1) 紫色株。
(2) 健全で、枝がよく茂っている。
(3) 今後も、継続して観察できる。個体標識番号をつける。
(4) 他の木や建物の日陰になっていない。
   陽当たりの良いところを好むためです。
(5) 建物の南側壁面から3m以上離れている。
   壁からの放射熱の影響を除くためです。
(6) 根っこのあたりにボイラー管などの熱源が埋められていない。

2.観察の方法
(1) 一株に20ケの花房を選び(できれば東西南北の各面に5ケづつ)、標識をつける。
(2) 原則として毎日観察し、開花状況を記録する。
   「ライラック観察野帳の例」を参考にして下さい。

 参考:ライラックの花について
 花芽が開くと、たくさんの小花の蕾が現れます。
 小花が咲くとともに、花軸が伸長し、10cmから20cmの高さの円錐形になります。
 円錐形の小花の集まり全体が花房です。一つの花芽から一つの花房が生じます。

3.開花と満開の定義
花房の開花:花房を構成する小花が一つ咲いたら、その花房の開花とする。
花房の満開:花房を構成する小花が全部咲いたら、その花房の満開とする。
株の開花日:観察花房の50%(20ケ中 10ケ)以上が開花した日とする。
株の満開日:観察花房の95%(20ケ中 19ケ)以上が満開になった日とする。

*なお、小花が途中で咲き止まって、頂上まで達しない花房の場合、咲いた小花の1/4
 ぐらいが枯れたらその時点で「満開花房」とする。

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更新日:2002年1月25日
編集:なにわあいこ
改変:いしだのぶお