ゴーラの里

       〜なぜ人は蜂を飼うのか〜

 

                北海道大学和歌山研究林班

 

 

      

           京都大学理学部         山本拓弥 

           京都大学農学部         尾野亜裕美

           京都大学工学部         山本裕太

           北海道大学農学部        野勢琢馬

           北海道大学工学部        鈴木栄次

           北海道大学水産学部       柳澤さなえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

. テーマ設定の理由

 ハチという自然に生きる生物と、ゴーラという人為的なものとの関わりを調査することにより、森と里の連関を明らかにすることができるのではないかと考えたため。

 この連関を明らかにするために、下記に示す3つの仮説を立てることにする。

@    地域やその地域の産業によって人々とハチとの関わりが異なるのではないか。

 

A    古座川上流地域のほうが蜂蜜が高価であることから、下流地域と比べ、養蜂が盛んなのではないか。

B    古座川上流地域は下流地域と比べ、文化として養蜂が根付いているのではないか。

 

. 調査方法

 

 調査には平井、松根、明神、直見の4集落を選んだ。

    平井

古座川町の北部に位置する山深い集落。人口210人、戸数96戸。ゆずの産地として有名で北海道大学の研究林を有する。

  

    松根

古座川町の北部に位置する山深い集落。人口約70人。

  

    明神

古座川本流と支流小川が合流する、古座川町の南部に位置する集落。

  

    直見

古座川町の南部に位置し、明神の東に位置する集落。

 

 

   これら古座川上流2地域、下流2地域の比較的集落の形や世帯数が似通っている地域を調査することで、仮説を明らかにすることができると考えた。

   調査はアンケート形式で住民の意識を調査する聞き取り調査とゴーラの数や位置を調査する実地調査を行った。

 

〇聞き取り調査項目

ゴーラの所有の有無

・養蜂歴

・昨年の設置個数と実際に蜂が入った個数

・ゴーラの入手方法(手作り・購入・貰う)

・蜂を飼う目的(蜂蜜の採取目的)

・ゴーラの様子を見に行く頻度

・職業

 

仮説@の産業と養蜂の関わりを調査するために職業の項目も取り入れた。

 

・実地調査

 GPSを用いてゴーラの設置場所の位置を記録し、コンパスを用いてどちら側にゴーラの入り口が向いているかを調査した。設置個数を調べることで、どれだけゴーラ養蜂が盛んであるのかを明らかにすることができる、と考えた。

 

 

. 調査結果 

 

  <アンケート結果>

 

 ・ゴーラの有無

       

                      (図1)

明神:7/18  直見:2/13  松根:6/17 平井:18/33 と聞いた世帯数に対するゴーラを持っている割合の高い順に平井、明神、松根となった。

   

 

・今はやってないが上の世代が持っている人の数

平井では現在ゴーラをもってなくて上の世代が持っていると答えたのが12人中6人、明神が12人中2人、直見が9人中5人、松根が11人中6人という結果になった。

 

   

  

 

現在ゴーラを持っていない人はなぜやらないのか?

・商売をしているから。

・蜂に嫌われているから。

・蜂が入らなかったから諦めた。

・難しい。面倒だから。

・ミツバチがいないから。

・旦那がいなくなったから。

・興味が無いから。

・蜂アレルギー。

・足が悪い。

・ご高齢。

・忙しいから。

・他にやることがある。

・蜜が近所の人からもらえるから。

・蜂に何回も刺されジンマシンができたから。 

という回答が得られた。また最も多かった回答は「面倒で手間がかかるから」という回答であった。

 

                                  

・何年前からゴーラを持っているんですか?

・1〜4年前と答えた方が2人

・5〜10年前と答えた方が7人

・11〜15年前と答えた方が8人

15年以上前と答えた方が14人

という結果になった。

 

 

    ゴーラを設置しようと思った理由

・蜂蜜が貴重だったから。

・実家から分けてもらったから。

・近所の人にゴーラ・蜂(分蜂時)分けてもらった。

・周りがやっていたから。

・親が代々やっていた。

・蜂が好きだから。趣味。

・使えない木材でゴーラを作ってみた。

蜂蜜が食べたいから。

多かった回答として、「家族・周りの人がやっていたから」だった。

 

 

    設置個数とその中で蜂が入っている個数(成功数)

    

                   (図2)

という結果になった。なお集落によって調査件数が違うので、一世帯あたりの所有数を比較すると下のようになる。

      

                    (図3)

1世帯当たりの設置個数で見ると松根が最も高く次に平井、直見、明神と続いた。

 

 

持っているゴーラの入手方法

     

                    (図4)  

同じ山間部である平井、松根でもらった数に明らかに違いが現れた。 また同じ下流部である明神と直見でも異なる結果となった。またゴーラは全体的に手作りが多いようだ。

 

 

    ゴーラをおき始めた理由

・蜂蜜が貴重だから。

・子供、親戚、近所にあげるため。

・蜂蜜がなめたい・欲しい。

・趣味。

・蜂がかわいい。蜂が好きだから。

・友人の勧め。

・蜂をもらったから。

・健康のため。  

 

やっている意義としては自分で使い,あまったら分けるたり、趣味であったりするようだ。

 

 

    採取した蜂蜜の使用法

                     

                     (図5)

調査箇所全体で去年蜂蜜が採れて自家用にしたのが、34中28人で売ることもある人が、6人という結果になった。また集落ごとに見てみると下のグラフになる。

     

                   (図6)

 

ゴーラの設置個数が下流部より上流部の方が多いだけあって上流部の方が売っている方が多いようだ。

 

 

  ・一升当たりの値段 ()

平井:13000150001000012000(知り合いに売る)

直見:12000

松根:15000

  上流部では15000円のモノもあるが下流部ではそこまで値段が上がらないようだ。

 

 

 

 

   

 

 

・職業別のゴーラ所有者数

                  (図7)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<実地調査結果>

 まずGPSで記録したゴーラの位置を地域別に下記示す。

平井

 

                      (図8)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松根

                    (図9)

明神・直見

 

                     (図10)

この図からどの集落においてもゴーラは、道路沿いに設置してあり、比較的かたまっていることが見て取れる。

次に集落別の設置数のグラフを示す。

               (図10)

この図からは、古座川の上流地域に位置する平井と松根ではゴーラの設置が多く、逆に下流地域の明神、直見では少ないと言える。

 

4.考察 

地域やその地域の産業によって人々とハチとの関わりの違い

図7より山仕事をしている人の82%がゴーラを設置している。これは、山仕事に就いている人はゴーラの材料となるスギなどの木材が容易に手に入り、設置する機会も増えるからだと考えられる。また山に入る機会が多く、山中の蜜蜂が入りやすい位置に設置したゴーラを確認し、手入れをする頻度が増え、蜜蜂の天敵であるツヅリ虫がわきにくい。その結果、蜜蜂が住みつくゴーラが多くなっていくことも考えられる。このことより、仮説@は正しく里に住む人々の産業と蜂との関わりは密であると言えるだろう。

 

古座川上流地域のほうが蜂蜜が高価であることから、下流地域と比べ、養蜂が盛んなのではないか。

   アンケート調査によると、そもそも、ほとんどの人が採取した蜂蜜を自家用や贈答用にし、売りに出すことは少ない(図5・図6)。その中でも売りに出している人に1升当たりの値段を聞いてみると、4つの集落でほとんど差は無く、同集落内でも値段に差がある。このことより、仮説Aは否定され、蜂蜜が高価であるからゴーラ養蜂が盛んであるとは言えず、ゴーラ養蜂が盛んであるから蜂蜜が高価であるとも言えない。

 

古座川上流地域は下流地域と比べ、文化として養蜂が根付いているのではないか。

   まず、アンケート調査より、古座川下流地域ではゴーラの大量所有者が1人もしくは2人おり、その人だけからゴーラ養蜂が広がっていることがわかった。古座川上流地域では、何人もが大量に所有しており、さまざまな人から影響を受け、ゴーラ養蜂を始める人が多かった。また、(図4)より、家族間を除くゴーラの譲渡量は平井が圧倒的に多い。また平井ではゴーラだけではなく蜂を譲ってもらうことも多いようだ。しかし、同じ上流地域の松根ではゴーラを譲ってもらう人はいなかった。よって、確かに上流地域は下流地域に比べて、養蜂が文化として根付いてはいるが、上流地域内でも差があり、一概に仮説Bが正しいとは言えない。そこでその差となっている要因を考えてみると、平井にはゆずという名産物があり、その収穫時期には地域の人々が互いに作業を協力し合うという相互扶助の文化がある。一方松根では、そのような産業は無く人々の相互扶助の機会は限られるようだ。すなわちここでも産業が文化形成の一因となっていると考えられる。

 

以上よりゴーラ養蜂は里に住む人々の産業と森に住む蜂とは文化によって連関を示し、テーマに対しては人は文化があるから蜂を飼うのであると言える。

 

 

.今後の課題

今後の課題として以下の4つが挙げられる。

    ゴーラネットワークの追跡

→ゴーラの引き継ぎ:誰がどの方に蜂をあげたのかを調べる。

    具体的な蜜源の探索

→ゆず栽培が蜂に影響を与えているかを調べる。

    他地域との違い

→他の地域でもゴーラ養蜂をやっているかを調べることによってゴーラが平井に特有のものなのかを調べる。

    なぜゴーラ養蜂が始まったのか?

→今回ゴーラが平井に多かったことは分かったがそもそもゴーラというものがなぜ古座川周辺で始まり、根付いていったのかを調べることができなかったので調べる必要がある。

 

 

参考文献

 古座川町町役場ホームページ  http://www.town.kozagawa.wakayama.jp/contents/top_index.asp